空をなくしたその先に
「僕は……どうすればいい?」

「黙ってダナの言うとおりにしときゃいいさ。
空の上にいる間はな」


ビクトールは、ただ肩をすくめてみせる。


「地上におりることになったら、二人で知恵をしぼって考えろ。
無事に王都へたどりつく手段をな」


それから、顔を引き締めると、二人に言い聞かせた。


「何かあったらすぐに逃げろ。ディオの持っているものを、
王都に届けることだけを考えるんだ」

「はいっ!」


二人の声がそろう。
ビクトールは目を細めた。


「それとダナ……」

「はい」

「出たら逃げることに専念しろ。後ろに乗ってるのがヘクターじゃないってことを忘れるな」

「……はい」


数秒の間をあけて、ダナはうなずく。

二人の間の別れの抱擁は、恋人同士かと思ってしまうほど熱烈なものだった。
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