空をなくしたその先に
壁に並んだろうそくの明かりが不気味な雰囲気をかもしだしている。

水滴が首筋に落ち、ぞくりとしてダナは首をすくめた。

階段を登って通路から出た先は、カイトファーデン家の所有する土地だった。

船着き場へ行くためには、崖に作られた階段を降りていかなければならない。

誤って転落しないよう、岸の端には手すりが作りつけられている。


「風邪ひきそう」


また雪が舞い始めたのを見て、ダナは言った。

闇の中でも雪の白さが目に痛い。

コートは着せてもらっているのだが、そこを通り抜けて冷たい空気が身体を刺す。

ほんの少しだけ、東の空が明るくなってきていた。


「そうだな、女の子の身体を冷やしちゃいけないよな」


首にマフラーが巻きつけられる。

さらに肩にコートがかけられた。

昨夜してくれたのと同じように。


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