美女の危険な香り
「食後すぐで動きづらいんだ。もうちょっと待っててくれないか?」


 と言った。


「分かりました」


 古雅も高橋もすぐに離れていく。


 俺は社長室へと戻るため、上階行きのエレベーターに乗り込んだ。


 <十五>のボタンを押して、自分の仕事場へと向かう。


 エレベーターが上昇していくにつれ、俺の視界には東京の海が入ってきた。


 ビルから南東方向に目を転じると、東京湾が見える。


 天気がいいので、空には雲一つなく、彼方まで晴れ渡っていた。


 俺が部屋の前でキーを取り出し、キーホールに差し込んで右回しに回すと、秘書の一人がコーヒーを淹れてくれていたのだろう、いい香りが漂っている。


 俺自身、秘書の子たちの付ける甘い香水の匂いには慣れていたので、別に抵抗はない。


 椅子に座ると、目を通すべき資料が小積まれている。

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