美女の危険な香り
 上下ともスーツに身を包み、俺は階下へと降りるため、エレベーターホールでボックスを待った。


 連日仕事疲れで、正直リラックスすることが間々(まま)ならない。


 俺は一階のフロントにキーを返し、ホテル代を清算すると、建物を出て歩き始めた。


 今日も古雅や高橋と顔を合わせるのが正直嫌だったのだが、同じ会社で働いている以上、仕方ない。


 オフィスに着くと、俺は社員たちに声を掛けて回りながら、社長室へと向かった。


 今井商事はオヤジで先代社長の信太郎のお陰で、今日六本木のど真ん中にオフィスを構えることが出来ている。


 俺は責任の重さを感じていた。


 この重圧が圧(の)し掛かってくる。


 毎日、相当な量の資料に目を通す。


 今井商事は立ち上がった頃からあまり仕組みが変わっていないのだ。


 社長である俺が企画書などに目を通し、チェックを入れてから部下に送り返し、それを企画として実現させる。
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