美女の危険な香り
 と言い合った。


 この二〇〇九年という一年を振り返ってみると、俺は仕事で休む暇がなかったのだが、彼女は結構ゆっくりしていたようだ。


「……来年はどんな年になるんだろ?」


 ケーキにフォークを入れながら、千奈美が呟くように訊いてきた。


「きっといい年になると思うよ。互いにプライベートが充実しそうだしな」


 俺が頷き、ケーキを口へと運ぶ。


 マスターはタバコの箱を取り出し、一本抜き取って銜え込んで、火を点け吸い始める。


 俺も食後の一服と思って、フォークを皿の脇に置くと、タバコを吸い出した。


 店内は禁煙になっていない。


 俺もマスターも、そしてタバコを吸わない千奈美もゆっくりと寛ぎ続ける。


 年末で新年が押し迫っているときに、俺たち二人は密会していた。


 どうせ今頃、優紀子も誠と過ごしているだろうなと思って……。

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