モノクローム
あたしは地下鉄に乗るから、バスターミナルとは反対方向だ。
それでもおかまいなしに
黒の君を追ってバスターミナルへ向かった。
息を弾ませ、ターミナルを見回すと
黒の君は3番のりばに立っていた。
呼吸を整えるように、ゆっくりとした足取りで近づく。
あと5歩……4歩…3歩…………
「……あの…」
黒の君は自分のことか確認するように
戸惑いながら振り向いた。
その顔は、(誰?!)
といったような、驚きの表情を浮かべていた。
「この前はありがとうございました!」
思い切って言うと、一瞬目を泳がせ考えてから
思い出したように
「あぁ〜あ!」と言ってから
「大丈夫だった?」と笑った。
「はい!少し休んでから行きました」
「そぅ」
「ずっとお礼が言いたくて…」
あたしが恥ずかしそうに言い俯くと、黒の君は
「わざわざいいのに」
と苦笑混じりに言った。