モノクローム
講義が終わるとすぐに
あたしは声楽担当講師の部屋を訪ねた。
「すみません、一年Dの澤井京奈ですけど…」
声をかけると、あたしのピアノ担当でもあり
声楽講師の樋口先生は振り向いた。
「掲示板見たんですけど、あたし、ソプラノになってますがアルトの間違いじゃないですか?
あたし、ソプラノは出ません。アルトならいいんですけど…
あ、てか、これ自体、嫌な…じゃなくて、自信ないんですけど。
他の生徒に変わってもらえないですか?」
樋口先生は何かノートか資料みたいなものを広げ、確認すると顔を上げた。
「この前のソルフェージュの試験で決めてるのね。
あなたは確かにソプラノになってるわ。
これは試験官全員で決めたことだから、今から新たに選出し直すこともできないし…
主任の小倉先生がソプラノって書いてる位だから、大丈夫よ」
「え…はぁ…わかりました」
あたしは首を捻りながら、不満一杯に教官室を後にした。
そして、ヒロにメールをする。