モノクローム
あたしは地下鉄の中で、ぼんやりと明日香の言った言葉を思い出していた。
《どうなるかわからない片思いの人より、大事にしてくれるヒロ君を大切にしなよ》
《今だけだって…憧れてるうちが楽しいんだから》
《携帯番号だって知らないんでしょ〜?
向こうからも聞かれなかったなら脈ないよ》
《そんなかっこよくて、バンドやってるなら、彼女いるんじゃない?》
確かになぁ……。
携帯番号なんて聞く勇気もなかった。
聞かれてもないし。
彼女いるのかな?…いるよね。
ヒロと別れたからって
零とどうにかなれるわけじゃないよな…
そんなに急ぐことないか……。
あたしは地下鉄を降り、重い足取りで階段を昇った。