モノクローム
あたしは電話を切ると
「さっきは鞄、ありがとう」
と、零を見上げて言った。
あたしの方を見る零は、下を向く形になるから
髪の毛が顔に半分くらい掛かっている。
その髪の毛の隙間から見える顔は、女の子のあたしでも羨むほど白い。
髪の色が黒いから、そのコントラストで余計白く見えるのかな。
「おっちょこちょいなんだね」
零に言われて、あたしはまた恥ずかしくなる。
(なんか…おちょくられてばっかり!)
下を向いて、少し拗ねてるそぶりをしていると
「あれ?怒った?」
頭の上から零の声がした。
「いや?おっちょこちょいです…」
俯いたまま言うと
「ほら、怒ってる」
と、また零が言った。
「や、ホント怒ってな……」
言いかけて顔を上げると、視界にあたしの降りる駅が映った。
「ぅわっ!やばっ!」
今度こそ鞄を落っことさないよう
しっかり持って立ち上がると
あたしは急いで電車から降りた。
(ほんと、有り得ないほどカッコわるぅ〜)
あたしは振り返って零に手を振ると
電車を見送らず、改札へと逃げるように向かった。