モノクローム

「あら、ヒロ君!どうぞ
食事中だから、部屋で待ってて?」


母の明るい声にあたしは慌てた。


(なっ、なんでいきなり家に来るかな…)


(着いたら連絡するって言ってたのに…)



あたしはうんざりとして箸を無造作に置くと、勢いよく立ち上がった。



「ほら、いらなかったんじゃん?」

弟の声を背中越しに聞いて、余計ムカつきながら、あたしは部屋へ行った。





「着いたら連絡くれるんじゃなかったの?!」

あたしは部屋に入るなり不機嫌にヒロに向かって言った。


「したよ?これ…」

ヒロが布団の上に放り出したままのあたしの携帯を取り上げた。



「……アッ!」

あたしは小さく呟いてから

「…ごめん」

と言った。


携帯を部屋に置きっぱなしにしてて、気付かなかったようだ。


着信があったことを報せるランプが光っている。



(ハァ…またしくったよ…)


後悔しても遅かった。
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