窓に影2




 土曜であるのをいいことに、どっぷり眠りに落ちる。

 途中で母が部屋に来たような気もしたが、ひたすら夢に身をうずめた。

「おい」

 そのとき見ていたのは、勉強をせずに数学の期末試験で100点満点を取るという夢だった。

「おい、恵里」

 教師に褒められ、クラスメイトに崇められ、歩に優しく頭を撫でられるという、気分の良い夢……。

「んふふ、次も頑張る……」

 これが寝言だということに、自分は気付いていない。

「起きろって」

 ツーンと飛び込んできた、夢とは何の脈絡もない歩のセリフ。

 この瞬間、私は現実に引き戻された。

「出かけるぞ」

 目の前に、歩の顔。

 メガネじゃないし、髪型も作っちゃってるし、ジーパンだし。



< 8 / 232 >

この作品をシェア

pagetop