十人十色-それぞれの恋- 短編集
振り返ると、そこには学校のアイドルと言われている加賀見刹那がいた。
「職員室が分からなくて」
「職員室なら私も行くので、一緒に行きましょうか」
そういって彼女は歩き出した。
彼女と喋ったのはそれだけで、職員室に向かう間も一言も話さなかった。
「職員室はここです」
「ありがとうございます」
「いえ」
お礼を言うと刹那は、もと来た道を戻り始めた。
「あっの!!」
彼女はピタッと止まって、ゆっくり振り向いた。