勇者は僧侶のなんなのさ
「そっか。それは良かった」


これ以上に何と言えば良いのか。


「さて、そろそろ起こしたらどう?」


「でも…………」


「私達だって暇じゃない。それに、魔法の効力は切れているはず」


有無を言わせない、シサの迫力。


これは提案ではない。


強制だ。


「…………わかったよ。…………もしもーし」


少女の肩を優しく叩きながら声をかける。


しばらくそれを繰り返すが、少女は目を開けようとしない。


魔法の効果が強すぎたのだろうか。


「起きないみたい」


「待って」


シサの声と同時に、少女の瞼が震えた。


そして、目がひらかれる。


眩しそうに腕で目を覆い、目を細めた。


瞳は髪と同じ、明るい赤色。


「おはようございます」


とりあえず、言ってみた。


「ここは…………どこ?」


どうやら、挨拶を返す気は無いらしい。


「ここは病院です」


「…………病院?」


「はい。何も覚えていませんか?」


スリープの魔法は、一時的に記憶障害をおこす場合がある。


少女もその類だろう。


「何も覚えて…………」
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