勇者は僧侶のなんなのさ
「そうね」


とだけ言い残し、シサは再び本に没頭しはじめた。


こうなった時のシサはすごい。


もの凄い勢いでページをめくっていき、誰が話し掛けても反応を示さないのだ。


「あれ?」


そういえば、やることがなにもない。


いくらなんでも、ずっと寝顔を見ているわけにも行かないし。


かと言ってシサはこんな状況。


あまりうるさく話しかけると、鉄拳が飛んでくる可能性がある。


その威力たるや。


首から上がなくなるかと思った程だ。


その時に感じた。


シサは僧侶以外なら、剣でも黒魔術でも一流になれるだろうと。


裏を返せば、一番合わない仕事をしているという事になる。


「よっと」


とりあえず、筋トレもかねて逆立ちをしてみた。


人間の逆立ちの限界に挑戦してやると思っていたが、結果10分もしないうちに飽きる。


そして今は病室の片隅にあぐらをかき、窓の外を眺めていた。


「ふう…………」


パタンと言う音ともに、シサは本を閉じた。


「終わったの?」


「終わった。感動のラストだった」


黒魔術の勃興と感動が結び付かない。
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