勇者は僧侶のなんなのさ
ただのお伽話、という以上に何があるだろうか。


「私達にとって、あなたたちはモモタロウよ」


「褒めてる?」


「まさか」


ミユはシサを鼻で笑った。


「あなたたちでは、私達を理解することは出来ないでしょうね」


「だったら、もっと意図と目的を明確にすべき」


「明確にしても理解できないでしょ?」


ミユは笑い出した。


その笑いはあまりに異様で、気持ちが悪い。


何かにとりつかれている。


そう感じさせるような、不気味さが宿っていた。


シサは耐え切れなくなったようで、ミユに背を向ける。


「フェイ。行くよ」


「でも……」


「行くよ」


シサは振り返り、ゆっくりと言った。


「シサ」


「何?」


「悲しいの?」


最初、シサは怒っているものだと思っていた。


しかし、そうではない。


シサの目が怒りではなく、悲しみに沈んでいた。


どこがどういう風に、とは説明がつけられないけれども、シサの目には悲しみしかない。


そう感じた。


「悲しいはずがないでしょ」


シサは再びドアの方を向いた。


分かっている。


シサは恥ずかしがりの照れ屋だから、まっすぐに自分の感情をださないだけだ。
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