勇者は僧侶のなんなのさ
「じゃ、折角注目を集めているし、ここで僕の話をしようかな」


「短くな」


ランスが茶々を入れる。


「それでは手短に。僕の両親はギルドで働いていたんだけど、ある時ドラゴンの襲撃を受けてギルドと共に壊滅的なダメージを受けた。もう後が長くない事を悟った両親は、10歳の僕の体に奪ったドラゴンの血を塗り込んだの」


ドラゴンの血は人間にとって猛毒でありながら、飛躍的に細胞を活性化させる効果もある。


体に適応すれば強大な力を得て、不適応ならば死んでしまう。


まさに両刃の剣。


「結果として、僕は猛烈な疲労とちょっとした痛みという比較的少ないリスクでドラゴンの血に適合した。そして、そのままドラゴンを倒す事に成功したんだけど、そこからちょっと参った事になった」


椅子を出し、座った。


背もたれを前にして、ヘリに顎を乗せる。


「ドラゴンを倒すことに成功した僕は、全身にドラゴンの血を浴びた。しかし副作用の疲労で倒れたけれど、命にはなんの別状もない。偉い人達は、僕がどれだけ適合できるか調べたくなったらしく、僕を捕まえて実験をすることになった」


「フェイ」


「大丈夫だよ、シサ。僕は毎日気絶させられるまで血を塗り込まれた。一番酷かったのは、目に直接塗り込まれた時かな」
< 66 / 78 >

この作品をシェア

pagetop