勇者は僧侶のなんなのさ
ランスが静かに目を押さえた。


「こうして僕の体にはドラゴン一体分の血が吸収された。外側はもちろん、内側も血で強化されている。人造の怪物はこうしてできましたとさ。何か質問は?」


「なんでそんな酷い目にあいながら、まだギルドにいるのよ?」


ミュは体ごとこちらを向き、淀むことなく言い切った。


「良い質問だね。簡潔に言えば二つ。一つは楽しいから。もう一つは放っておけないから、かな」


「ギルドを?」


「まさか! この二人を、だよ。見て分かると思うけど、どちらも社会性皆無。まともな人がいないと、立ち居かなくなるからさ」


「フェイも「まとも」とは程遠いけど」


シサが無表情で言った。


ランスも頷いている。


「まぁそんなことも言われているけど、楽しくやってるよ。こんな所が答かな」

そういうと、ミュは口を閉じてじっと見つめてきた。


その瞳を見つめ返すと、ミュは視線を落として口を開く。


「……それで良いの?」


「何が?」


「だって、普通の生活が奪われたじゃない。いろいろな生き方があったはずなのに、その可能性を勝手に無くされて許せるの?」


「もちろん、許せないよ」


そういうと、ミュが落とした視線を上に持ってきた。
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