勇者は僧侶のなんなのさ
捕まえた少女は、ギルドに併設されている病院の個人病棟にいる。
個人病棟と言っているが、その実は病人が逃げ出さないように見張りが着いている、留置所のようなものだ。
外装も内装も白一色に統一されているが、それがかえって威圧感を与える。
仕事柄何回か来ているが、やはり好きになれない。
ここならば、シサとふたりきりにされるギルドの個室の方がまだましだ。
ただし、ギルドの個室では「家に帰りたい」とずっと思っているが。
「こちらです」
守衛さんは一室の前で止まり、鍵を開けてくれた。
この鍵は中から開けることも閉めることも出来ない。
「ありがとうございます」
頭を下げると、守衛さんは固い表情で「お気をつけて」と言った。
ノックをしてみる。
反応は無い。
「さっきのスリープの魔法がまだきいているみたいです。さっきの見回りでは眠っていました」
守衛さんが教えてくれた。
「それなら、入りまーす」
ドアを開けて中に入った。
「ちょっと。ノックくらいしたほうが良いわよ」
そういうシサも、後について中に入ってくる。
結局、ノックをしないまま、中に入った。