追憶のマリア
 何だかとても気分が良かった。


「立派な息子達だ…なぁ?そう思わないか?」


 運転士の若いヤツに言った。


「はぁ…」


 そいつは曖昧に返事をしながら、バックミラー越しに俺を見て、俺の真剣な表情を見ると慌てて、


「すみません、よく見てなかったもんで…。」


 と怯えたように謝った。


 いいんだ、と俺は言ってやり、窓の外を流れる景色に目をやった。


「あんな息子達を持った父親は、世界一幸せ者だ…」


 俺は独り言のように呟いた。


 そしてスーツの上着の内ポケットから、あのメモを取り出して眺めた。




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