私とアナタと甘い嘘


次の日。


朝から雨が降っていた。


窓を見ながら、一人廊下を歩いていると


「あっっ君!!」


「???」


肩をたたかれて振り向いたところには


昨日の弓道部の先輩がいた。


「なんですか?」


「君も、弓道部に入るのかい?」


「私は違います。入るのは麻奈の方だけです」


「君は、何部に?」


「テニス部です。」


「そうか・・・」


そう言葉を濁して、時間が過ぎていく。


その沈黙が、私には不愉快に過ぎなかった。


雨の音だけが、私の耳に伝わっていく。


「それだけなら、私は行きますね」


「あっちょっと!!」


そうして、私の腕をつかむ。


「あのさ・・・メルアド、聞いてもいいかな」


「は?」


私は思わず漏らしてしまった。


あまりに唐突だったからだ。


「いや、ゴメン。一目惚れ・・・なんだ」


「・・・・」


私は答えない。


そのまま立ち去ろうとした。


「ちょっ」


「ごめんなさい。興味、ないんで」


雨の音が、よりいっそう聞こえた。






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