distance~いちめーとる~
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「うわぁん…また負けたぁ!!」
「おまえ、俺がババひこうとするとニヤけるからな」
トランプを始めて1時間。
私の成績は全敗。
よくババ抜きばかりしていて飽きないな、と自分でも思うが、
楽しい時間っていうのは、本当に早く過ぎるものだ。
最初は『やらない』なんて言っていた由樹も、トランプに夢中になっていて、
もう1時間も経っていたんだ、と思うほどだった。
「あ、もうこんな時間か」
由樹が壁にかかっている時計を見ると、針は11時ちょうどを指していた。
「おい、そろそろ寝た方がいいんじゃないか?」
「えー。まだ11時だよ?遊び足りないよ~」
「っていうか、俺が寝たいんだよ」
そう言う由樹の目は、確かにいつもより細くなっていた。