雨に流れる
駅でサトシと別れてから、一駅手前で電車を降りて歩くことに。

一人で傘をさして歩く夜。

なんとなく色んな事を思い出してふと足が止まってしまった。

透明な傘の中から見上げた空は、黒い雲から雨を沢山落としていて。

「…」

あの日に見た雨も、こんな風に空から落ちていたんだよな。

ふと冷たくなった父さんと母さんを思い出し、目頭が熱くなってしまった。

雨の日に居なくなってしまった父さんと母さん。

雨が怖いと感じることもあったけど、こうして雨の中普通に出歩くことが出来る俺。

父さんと母さんの命を奪った車ですら、乗ることが出来ている俺。

ふと傘を下ろすと、上を向いていた顔に沢山の雨が当たる。

「…くっ…」

どうにもならない気持ちがこみ上げてきて、頬を雨以外の温かい涙が伝う。

遅い時間だけど、それなりに人通りのあるここだけど。

すぐ横にあった公園の中へなんとなく足を踏み入れ、近くに合ったベンチにぬれていることも気にせずに座った。

足元を見ると地面にはあちこちに水たまりが出来ていて。

もう一度空を見上げ、涙が止まるまでしばらくそのまま動くことが出来なかった。


・   ・  ・ ・・・…
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