自分探しの旅

「・・・」

「で、私の場合も京介さんと同じで、龍仁さんの前世療法がきっかけでした。最初はずいぶん悩みましたよ。こんな運命はとうてい受け入れられないってね。」

　吉村はさっきから楽しそうな笑い声が聞こえるカップルのテーブルの方へ、ちらっと目をやった。

「何せ恐怖を抱いたものが現実に形となるわけだからたまったものじゃない。京介さんはまだよく分かってないかもしれないが、一度現実になったものは取り返しのつかなくなるんです。」

　京介は吉村の顔が曇ったように見えた。視線を下におろし、手に持ったコーヒーの湯気を見つめている。

「京介さんには彼女がいますよね。龍仁さんから聞いています。前世であなたの師匠だったってね。」