自分探しの旅

第20話 「何があっても・・・」

 二時間経った。
 あれほどざわめいていた店内も静かになった。京介はコーヒーのおかわりで粘っていた。

『おかしい。何かあったのか。』

 吉村から電話がかかってきたのは、京介がしびれを切らし、携帯に手をかけたときであった。

「もしもし、京介さん?」

「どうしたんだい、吉村君。」

「実はそちらへ行けなくなってしまったんです。」

「え?」

「いいですか。私のはなしをよく聞いてください。今、車の中からです。そちらへは向かっていません。つけられているんです。今そちらへ行くとまずいことになる。」

「吉村君は恐怖をうまくコントロールできるようになったんじゃなかったのか。」

「そうです。これは恐怖から生まれた結果じゃない。確実に誰かの仕業です。ただどういう訳か、危害を加えることが目的ではないようです。」

「じゃあ、どうして?」

「わかりません。これは私の憶測ですが、目的は私ではなくてどうも違うところにある気がするんです。」

「・・・」

 しばし沈黙が流れた。京介は状況を冷静に把握しようとした。龍仁の存在が忽然とこの世から消えている。そして今吉村が何者かにつけられている・・・
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