自分探しの旅
「じゃ、私温泉に入ってくるね。」

 由香里はしばらく手伝っていたが、そう言うと部屋を出た。

『これを全部まわるとなると大変だな・・・』

 そう思い、お茶を飲みながら何とはなしにテレビのスイッチをつけたときである。テレビではローカルニュースの番組をやっていた。

「今日、阿蘇神社では、毎年恒例の『火振り神事』のお祭りが行われました・・・」

 京介が異変に気づいたのは、テレビの中の「自分」を見たときだった。

「ん?」

 とっぷりと暮れた夕暮れの中、神社の境内では、氏子たちが縄の先につけた松明の火をくるくる回している。その美しい炎の輪をたくさんの見物人が見ている。

「・・・訪れた観光客の目を楽しませていました。」

 ニュースキャスターの声とともに、テレビの画面が見物人にズームアップする。そこには紛れもなく、京介自身の姿があった。横には由香里がいた。

「・・・」

 京介はしばし、ゼンマイが切れたおもちゃのように頭が呆然となった。

「たしか、祭りは明日だと由香里は言ってたな。ということは・・・明日の自分だ!」
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