自分探しの旅
 次の日曜日、京介は図書館へ足を運んだ。臨済宗佛教大辞典は、電話帳ほどの厚さがあった。何々派の何々寺の誰それというあみだくじのような系図が、めくってもめくっても書かれてある。その一つ一つを指で追っていく。そしてついに円心を探し当てた。しかも、円心の系図の上には天寿道人の名があるではないか!

「間違いない。」

 京介は龍仁のすごさをあらためて知らされる思いだった。まさか自分をペテンにかけるために、この電話帳みたいなやつを引っぱり出して、〈天寿道人―円心〉の系図をチェックしていたとでもいうのだろうか。京介にとって、そこまで疑うことは、丸い地球を見せられて「それでも地球は平面だ」と言い張るようなものに感じた。円心の項目にはこう記されていた。
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