ファーストキスは蜜の味。
「若林ちゃん?」
「あ、ごめんなさ…っ」
すっかり忘れてた白石さんの存在に気づき、あわてて笑顔をつくったのに、失敗した。
つくり笑顔って、どっかおかしくなるんだよね。
恭兄を引っぱたいた女の人は、顔を隠すようにあたしにお辞儀をして走りだした。
「おい、待てよ」
女の人を追うような呼び声が頭に響く。
あたしは、悔しくて、イヤで、お辞儀すらできなかった。
いまここにいるなかで、仲間だと思えるのは白石さんだけだった。
だって……
――…悲しそうな顔にいちはやく気づいて、あたしの頭をなでてくれてるんだもん。
落ち着こう。
“いま”を独占してる彼女をうらむのは、あたしの身勝手だから。
あたしも、まえに進もう。
「白石さん、また明日ね」
「……あ、あぁ。おやすみ」
「おやすみなさい」
あたしは恭兄をみることなく家に入った。