オトコノコの気持ち!


「あら、早いね梓

パンとご飯、どっちがいい?」


欠伸まじりに言うお母さんは、すっぴんなのに愛らしい顔つきで羨ましい。


「……ご飯、」


お母さんとまで比べるなんて。
あたしは兎に角く、自分を誰かと比べる。

そのたび自分の欠点に気付いてくだけなのに、気付けばまた、人と比べてる自分がいる。


「ねぇ、お母さん」

「なに?」


二人分のコーヒーを入れる。
キッチンに並んだ肩幅は、あたしの方が広いみたい。

これでもあたしは158でわりと小柄、お母さんは160くらいで38歳のおばちゃんで。

そこに、余計にへこむ。



「お母さんより可愛いお婆ちゃんが身近にいたらどうする?」



お母さんはキョトンとした。

あたしはチラッと視線を投げてから、沸いたお湯をカップに流し込む。



「お母さんもお婆ちゃんになったら、その可愛いお婆ちゃんみたいになれるように頑張るに決まってるじゃないの!」

(いつ決まったんだよ)



……時折。

甘い顔したお母さんが、綺麗に見える瞬間がある。

そんな時に、つくづく思う。お父さんは見る目があるな、って。


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