君の瞳に映る色
強引に引かれるまましばらく
歩いて、少し木々の少ない開けた
場所に出ると玲は立ち止まった。

「そういえばお嬢様、
見慣れない恰好してるな」

繋いだ手はそのままに
玲は改めて棗を見る。

細身のデニムは棗の足のラインを
長く綺麗に見せていたし、
少し長めのライトグレーの
カーディガンも平凡なはずなのに
棗が着ると色っぽく感じる。

軽く手を引くと棗はよろけて
前のめりになった。
抱き止めるようにして棗の身体を
自分の腕の中へ収める。

耳元に顔を寄せて囁いた。

「すげー、そそる」

ドクンと心臓が跳ねて耳まで
熱くなるのを棗は感じた。

思わず顔を背けた棗の首筋に
赤い痕を玲は見つけた。

「……あいつに何かされた?」

「さ!!されてないわよ!」

突然の質問に棗は櫂斗とのことを
見られていたように感じて
恥ずかしくて目を伏せた。

自分の腕で体を強く抱きしめる。

まだあの男に触られた感触が
肌に残っている気がした。

ティアラのいなかった時のことを
想像して身震いすると、
玲がマフラーを棗の首に巻いた。

紅茶色の瞳が無言で見つめる。

「別に寒いわけじゃないわ」

強がって言うと、知ってる、と
玲は笑った。




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