君の瞳に映る色


慌てふためく棗を見て、玲は声を
殺して笑い始めた。

睨んでやりたいが
それどころでもなく
仕方ないので箸でグルグル混ぜて
スクランブルエッグにする。

「やっぱり花嫁修業したほうが
いいんじゃないか?」

「うるさいわね…」

言われて横目で睨むと玲はまだ
笑っていた。



何とかできた朝食を
2人で食べ、玲に連れられて
スーパーへ行った。

入り口にある棚に並んだ本を
見ながら玲が、
料理本買ってやろうか、と囁く。

「余計なお世話よ!メイド
みたいなまねはしないわよ」

と、思わず顔をしかめた棗に、
「でも俺んちで暮らすんだから
多少は必要だろ。
むしろ作って?」と、平然とした
顔で言う。

「誰が暮らすって言ったのよ!」

びっくりして声が大きくなった。
ネイビーの瞳を大きく見開いて
玲を見る。

「誰が帰すって言ったよ」

口の端を吊り上げて玲は笑う。
呆気にとられたままの棗を尻目に
めぼしい料理本を選んで
手に取った。

さて、と勝手に棗の手を
取って歩き出す。





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