【Transformation of Tony】ﾄﾗﾝｽﾌｫｰﾒｰｼｮﾝ･ｵﾌﾞ･ﾄﾆｰ

どっちの味方ショー

《やっぱりこのお金は
遣えない。》

麗子は後日、匿名希望で
このお金を常務の自宅に
届ける事にした。

何か訊かれたら常務に
頼まれたと言えば良い。

絶対に手を着けたら後から
立ち直れなくなりそうな
気がする…

『はい、お疲れ様で御座い
ました。』

どうやら施術中のお客さんが
終了して帰る様だ。

チーフがハケでお客さんの
顔に付着した毛を払っている。

いよいよ麗子の順番が
回って来る様だ。

『中津田河様、ポイントカード
が、あと２回で一杯に
なりますね。
こちら、お返し致します。
あと、新しいトリートメントの
サンプルです。
こちらお使いになってみて
下さい…。

有難うございました。』

麗子がお客さんとチーフの
会話にハッとなった。

中津田河さん？

この珍しい苗字は、
そうそう無い筈だ！

もしかして…常務の奥さん？

麗子は思い切ってその女性に
声を掛けてみた。

『ぁ、あの～。
御主人は、アーバンネット
システムズって会社に
お勤めではありませんか？』

突然、声を掛けて来た素行の
悪そうな人物に、振り向くなり
怪訝な表情を浮かべている。

『ぇ、ええ、
そうですけど…？貴方は…？』