【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー


急いで麗子がカウンター側の
チーフの元へ駆け寄ると
何やら耳打ちしている。

『チーフ、封筒あるかな?
あったら一枚分けて貰いたいん
だけど…』

『封筒?…これで良い
かしら?』

『アリガト…。』

チーフから封筒を受け取ると
カウンター裏でカバンの中、
何やらガサゴソ作業をすると、

待たせていた女性に賞状を
渡す様に両手で封筒を
差し出した。

『あの…これ…常務から
奥様へ、届ける様に
頼まれたんです!
これで美味しい物でも
食べなさいって…』

『宅の主人が?
何かしら…?』

奥さんは、封筒の中身を
確認した。

中には一万円札が数枚
入っている…

『…貴方は?会社の方?
本当に宅の主人がワタクシに
渡せと言ったの?』

『は、はい!
あの…バイク便担当の者です!

いつも家事とか苦労をかけて
いるから、たまには奥様に、
ゆったり、の~んびり過ごして
欲しいと仰って…』

『フッ…貴方、嘘が下手ね…
また女が出来たのね…』

奥さんは冷やかに苦笑しながら
呟いた。

『ち、違います!
日頃の労を労いたいと
常務が…』

麗子が必死に常務を擁護する。


『もう良いわ…。
全部解っているのよ…
それに…ワタクシは家事など
した事は無くってよ…。
家事は総てお手伝いさんが
やってくれているわ…。』


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