【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー


『アラン・ドロンだって
ソフィア・ローレンだって
あの頃とは違いますが皆一様に
魅力がありますでしょ?
棚橋様もご自分ではお気付きに
ならないだけで、ハツラツと
した魅力がお有りになります。

今度、宜しければメイクも
して差し上げますよ。
お嫌でなければ是非
お試し下さいな。』

そんなチーフの言葉に
ハニカミながら、おばあちゃん
が、応えた。

『“そひや・ろーれん”
だなんて‥
ホッホッホ、嫌ですよ。
あれは女優さんだから
綺麗でいられますけど
私はねぇ‥』

『では、私が棚橋様の
魅力を引き出してご覧に
いれますよ。

勿論、お代は戴きません。
お嫌でしたら直ぐにメイクを
落として差し上げますから
これからお試しになって
みませんか?』

『どうかしらねぇ‥』

おばあちゃんは、照れ
ながらもメイクする事を
了承した。

ゆっくりとハリウッドミラー
まで案内すると、おばあちゃん
を座席に座らせた。

優しくコットンでクレンジング
すると、念入りにマッサージを
施し、ピンクの下地を肌に
乗せて行った。

おばあちゃんの顔が自然な
明るさを増して行く‥

心なしかマッサージのお陰で
皺も少し減っている‥

伸ばし放題だった眉を整え、
ちょっと上げ気味ながら
優し気な眉を描いてゆく‥


< 58 / 83 >

この作品をシェア

pagetop