【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー


『ローズ…?いや違う…
ローラ…?違う…』

何やらブツブツと呟いている…


『…そうだ!ローザちゃんだ!
思い出した♪
あ~良かった♪』


マスターが思い出すなり指を
ペキッと鳴らして麗子を
指差した。


『そ、そうです!
よく判りましたね、
この前ちょっとしかお話し
してなかったのに。』


一度しか、しかも間接的にしか
会っていないのにマスターが
自分を思い出してくれた
その記憶力に麗子は驚きを隠せ
なかった。


『マァね~♪
記憶力には自信あるんだ♪』


マスターが「マァね~♪」
と言いながら人差し指と
中指で挟んだドル紙幣を
何処からともなく取り出して
顔の横でピラピラさせて
見せた。

どうやら「まあね♪」と
「マネー」を掛けた駄洒落
の様だ…。


50代前半の口髭をはやし、
チャールズ・ブロンソンを
三等身の漫画にした様な
つぶらな瞳のマスターが
何とも愛嬌のある顔でニッと
笑って見せた。


通常ならば限界を感じる
オヤジギャグも今日に限っては
心を和ませてくれる。

『まぁ、
そんな事より座りなよ。
なに飲む?

あれ?今日は独り?
トニーと一緒じゃないんだ。
待ち合わせ?』


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