【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー
ヒリヒリと焼けつく感覚が
何だか似てる。今の気分に…。
『大丈夫…?』
心配そうに声を掛けるマスター
に、トロリとした目で微笑み
返し、コクンとうなづくと、
麗子はそのままカウンターに
突っ伏してしまった。
『お、おい!大丈夫かよ…!』
マスターが肩に手を伸ばそうと
したが、
微睡む天使の様な寝顔に静かに
その手を引っ込めた。
『あ~ぁ、寝ちゃったよ…。
まっ、いいか…。』
カウンターの裏の数冊積まれた
雑誌の横にある仮眠用の毛布を
取り出し、マスターが麗子の
背中にそっと掛けた。
『トニー…。』
眠ったまま麗子がポツリと
呟いた。
『新しい…恋…ね。解ったよ。
今、キューピッド様が呼んで
やるからな…。』
彼女の背中にウインクすると
カウンターに戻り、ドリーム
キャッチャーのストライプが
付いたウエスタン仕様の携帯を
取り出した。
『…あっ、トニーか?ローハイドの
神山だけど…。悪りぃな遅くに
…。ちょっとさぁ、迎えに
来てくんねぇか?
…いや、俺じゃ無くてさ、
天使ちゃんを一人…。
お前、知ってんだろ?
ローザちゃんの住所…。
直ぐ来いよ!俺が間違い起こす
前に……バカ!冗談だよっ!
頼んだぞ!早く来いよ。
じゃあな。』
『バカ野郎…こう見えても
聖人君子だっつーの。』
携帯を閉じ、ジーンズの
ポケットに納めながらマスター
が独り言を呟いた。

