スピカ
「優羽ーっ!もう起きる時間よぉー。」
母の呼ぶ声がして身体を起こすと、自分の部屋だった。
昨日のことが嘘のように現実的な景色。
「また会えるかな?」
「聞いて聞いてぇ~!」
教室に着くと優芽が抱きついて嬉しそうな顔をしていた。
「どうしたの?」
「あのねぇ~今、うちらの地元でめちゃ有名なバンド『spica』がまた昨日駅前に来てたらしいんだよぉ。」
昨日?駅前?バンド?スピカ・・・って!!!!
「メンバー全員名前不詳で、ライブも全てシークレットライブ、知られていることはバンド名だけのバンドだよね?」
私が口を開けたまま聞くと、優芽は頷いた。
「私、昨日会ったよ。」
「えぇ?!」
驚いて後ずさりされた。
「なんかねぇ~とっても感動したのは憶えてるなぁ~・・。」
考え込んでいるとクラスの女の子達が騒ぎ出した。
携帯のワンセグで音楽番組を見ているようだ。
「ちょっとぉ!これって・・『spica』やんっ!」
「え?!嘘やろ?スピカはテレビには出ないってっっ!!!!!!」
近づいてその輪の中に入っていくと、昨日彼が映っていた。
《えーっ・・それでは、ボーカルさんは妹を捜すためにこの街に帰ってきたと?》
《はい。両親が離婚してばらばらになって以来一度も会っていないんです。》
《面識は?》
《ないですね。俺が年少の時でしたから・・・。》
《それじゃぁ、もし会っていてもわからないのでは?》
《いえ、一つだけわかります。》
《わかるとは?特徴とかですか?》
《はい。秘密ですけどね♪それよりも、妹と思われる子を先日見つけたので今日会いに行きたいと思ってます。》
《先日のシークレットライブの時ですね。》
《はい。だから・・・君はわからなくても俺は君の兄だよ。》
彼は最後に口パクをした。
確かにこう言った。
―――待っとけ。ゆう―――