粉雪-3年後のクリスマス-
「お前と違って、俺も後輩もデキがよくないんだよ」

「馬鹿なこと言うなよ。
お前は伸びるから怒られんだろう?きちんと謝るし、そのあとのフォローもするし」

 同期にはそんな風に思われていたのか。

なんとなく、こそばゆい気持ちなるが、しかし現実はそうでもない。


「全部後手後手だよ。お前ならこんなこと起きない」

「はは、確かにな」


 ちくしょう。

皮肉も込めた言葉だったのだけど、素直に受け取り、さらに肯定したその性格が悔しい。

そして、うらやましい。


 しんとする部署。

椅子の音も止まり、横目で見た同期は俺を見たまま頬杖をついていた。


「……で?三年も付き合ったカノジョにフラれた心境は?」


 その瞬間、せわしなく動いていた指が止まる。

こうして一生懸命時間に追われていれば、カノジョのことを思い出さずに済んでいたのに。


「うっせーな」

 トーンが下がっていたけど、気にせずそのまま仕事を再開する。

「ま、落ち込むのも無理ないか。カノジョ一筋だったもんな」

「………」


 寝て起きたら、なんだか夢の話のようだった。

まるで他人事みたく。


けれど、朝も昼も、仕事が終わる頃になっても。

カノジョからメールが入ることはなかった。



 ……ああ、夢じゃなかったんだ。

そう実感し、キリキリと胸が痛んだ。


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