-境界リセット-
9年前、私には兄がいた。
…いや、この表現はあんまり正しくないかもしれない。
兄自体は、今もいる。
ただ、一緒に暮らしていない。
両親が離婚して、別々に引き取られたのだ。
その兄も、ジョウと同じですごく頼りになったのを覚えてる。
別れてから9年間、全く連絡を取っていないからどうしているかは解らないけど…
ジョウと同じくらいの歳なはずだ。
「…どしたの?」
物思いにふけっていると、心配そうな声がかかる。
「え?なにが?」
「…なんか、寂しそうな顔してた。ここが」
ちょんちょん、と眉間を人差し指で差すと、
「こーんな感じに」
ぎゅーっと、これでもかっ!ってくらいに、皺を寄せる。
「なってた」
ぱっと指を離すと同時に、しかめっ面が元へと戻る。
「なんか悲しいことでも考えてんのかなー、と思って」
にっ、と吊り上がる口端。
そのどこか得意げな笑顔に、私は吹き出した。
「ぷっ…あははは!」
「え、ちょ…!なんでそこで笑うわけぇ!?」
「だって…!あはははっ!!」
ジョウの眉根に皺を寄せたしかめっ面と、
その後の笑った顔。
その差が激しくて、どうにも笑いが止まらない。