-境界リセット-
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「ごめんな、遅れて。連絡もしてなかったし」
「ううん、大丈夫」
申し訳なさそうに眉を下げるジョウに笑いかければ、彼も笑顔を返してくれた。
実はさ、と前置きして、ジョウは手に持っていたひまわりを見せる。
「コレ、地元の駅に近い花屋で買う予定だったんだけどさ」
「…売ってなかったの?」
「そーなんだよ!まじ想定外!!」
さいあくー
なんて口を尖らせるジョウは、私よりも年上なのに子供みたいで可愛かった。
「でもここら辺に花屋あるか解んなかったしさ。ダッシュで他の花屋までいって」
「うわ、お疲れさまぁ…」
しかも!と更に顔を歪ませながら、彼は歩きだした。
私も汗を拭ってから、それを追う。
「やっとのことでひまわり手に入れて、遅れるって連絡しようとしたらさぁ…あ、あそこでいい?」
指差した先には、一件の喫茶店。
ファストフード店やゲームセンター、カラオケ、居酒屋などがこの通りには立ち並ぶ。
それに不釣り合いなほど、小綺麗な喫茶店。
立ち止まり振り返るジョウに頷き返す。
「でさ、そしたら、ケータイ家に忘れててさー。ほんと、さいあくー」
「あははは、ジョウ間抜けー」
「うっせー」
軽口を叩き合いながら、私たちはその喫茶店に入った。
ちらっと目についた看板には、"カフェ シンメトリー"の文字。
木に刷毛で書かれたらしい白い字が、温かそうだった。
「いらっしゃいませー」
ブラウスに茶のエプロンをした店員さんが出てくる。
たぶん、私と同じくらいの年の女の子。
「二名様でよろしいですか?」
「はい」
ジョウが答えると、奥の四人用ボックス席に案内してくれる。