運命の歯車-不思議の国のアイツ-
「か、彼女から・・・手を離せよ・・・クソ野郎が!!」
ジュンは、最後の力を振り絞り、震えた足を踏ん張りながら、立ち上がった。
「まったく、いい加減、死んでおけばいいものを・・・・」
男達が、彼女の側から、再び、ジュンの周りへと集まってきた。
「逃げろ~!!!」
その瞬間、ジュンは、彼女に向って大声を出した。
しかし、彼女は、ジュンの周りに来ないで、ひとり、彼女の側に残った男に掴まれていて、逃げ出すことは出来なかった。
「バ~カ。逃がすわけないだろ?」
ジュンを取り囲んでいる男達の間に嘲笑が起こる。
(・・・・クソ・・・)
ジュンは、何度も心の中で繰り返した。
「彼女の面倒は、俺達が見てやるから、安心して死ねよ、バーカ。」
男の一人が、ジュンにそう告げると、持っていた角材をジュンに振り下ろそうと身構えた。
ボコッ!!!
「ガッ!!」
殴る音と殴られた男の叫びが同時に路地裏に響いた。
しかし、それは、ジュンが、殴られた音ではなく、ジュンの彼女を掴んでいた男が殴られた音だった。