【天の雷・地の咆哮】



・・あなたを好きになるロカの気持ちが、少しわかるわ。



あのロカを“繊細”と表現するのは、世界広しといえど目の前にいるこの女性くらいだろう。


ニュクスは自分一人が心配して騒いでいるのが馬鹿らしく思えて、自嘲気味に笑った。


「そうね。

今は不利益な行為に思えても、長い目で見たら有益なものになるかもしれないわね」


「はい」


穏やかに笑うヴェローナ。

頷いた拍子に、ヴェローナの長い髪がさらりと流れる。


「空など飛んで何が有益になるのかわからないけど、

我らが王には、せいぜい死なない程度に頑張っていただきましょう」


ニュクスが皮肉げに片目をつぶると、

二人は、どちらからともなく声をあげて笑い出した。


これが二人にとって辛い試練の始まりだなどと、

ウェスタの神でさえ予想できなかったに違いない。


華やいだ明るい笑い声は、風に乗ってどこまでも広がっていった。




< 159 / 214 >

この作品をシェア

pagetop