【天の雷・地の咆哮】
それからさらに数年の月日を重ね、ロカ王32の春を迎えた年。
それはウェスタの人々にとって、激動の年となった。
「マルス。勉学の時間ですよ。どうして姿を見せないのです?」
庭に植えられた大木に向かって、ヴェローナが声をかける。
「マルス!返事をなさい!」
何本もの幹と、折り重なる緑の葉のさらに空に近い場所で、
ガサリ、と何かが動いた。
・・うるさいな。
さらに何度目かの自分を呼ぶ声に、ようやくマルスは重い腰を上げ、
猿のように身軽に幹に手をかけると、するすると木を伝って地面へ着地した。
「なんですか?母上」
母が自分を呼びに来た理由など、一つしかなかった。
「勉学の先生が、あなたを探しています。
侍女が呼びに言っても嫌がって授業を受けないそうですね?」
ヴェローナの咎めるような口調に、マルスは口を尖らせた。