【天の雷・地の咆哮】
「ケレスは、王を殺したがっていた。
だが、ユピテロカ王の剣の腕は確かだ。寝所を襲うにも限界がある。
だから、代わりに王妃を殺してはどうかと言ってやったんだ。
それだけだ。誓って嘘は言ってない!」
小さくなって震える父に対して、何の感慨も湧かず、アニウスは大きく息を吐いた。
「父上。私の夢をご存知ですか?」
「夢だと?」
突然話が見えなくなり、カークスは怪訝な顔をする。
「私の夢は、この国が、未来に希望を持てる国にすることなのです」
「あ、ああ」
意味などわからぬまま、同意する。
「父上も、私の夢に協力していただけますか?」
「も、もちろんだとも!」
では、と言って、アニウスはいったん剣を頭上高く振り上げると、
そのまま反動を利用して、鋭く剣を振り下ろした。
ビュッ、と風を切り裂く音がして、ゴトッ、と何かが床に転がる音がした。
「堕落した臣下は、害にしかなりません。ご協力、感謝いたします」
その屋敷の主だったものの前には、半分ほど酒の入った瓶が置いてあったが、
それが飲まれることは永遠になかった。