【天の雷・地の咆哮】
深い意味があって訊いた事ではなかった。
自分の前では傍若無人に振舞うロカも、ひょっとしたら城の中では違った一面を見せるのかもしれない。
単純にそう思ってのことだった。
そうは言っても、あの適当な男のことだ。
てっきり、不真面目だの女に手が早いだのと返ってくるかと思ったのだが。
「とても・・・情け深くて、お優しい方でいらっしゃいます」
それまで硬い面持ちをしていたヴェローナが、顔を上げニュクスの前で初めて表情を和らげた。
・・この女(ひと)、こんなに美しかったかしら。
ニュクスは彼女のその仕草を見て、なぜだか胸騒ぎを覚えた。
今までに感じたことのない焦りにも似た何か。
「それに、お心が広いだけでなく、万人に公正で、賢者の瞳をお持ちです。
あのような方がお妃様としてお選びになるのですから、
きっとニュクス様はさまざまなことに秀でた素晴らしい方なのでございましょうね」