【天の雷・地の咆哮】

適当に政略結婚で決まった自分に対し、特に、嫌味を言っている様子でもない。

ヴェローナは、真実ニュクスをうらやましげな瞳で、正面から見つめてきた。


「あ、そう言えば、私まだお祝いを申し上げていませんでした。

このたびは、真におめでとうございます」


「え。あ、ありがとう」


褒められたうえに、祝いを述べられたというのに、ニュクスは素直に喜べない。

その理由に皆目見当がつかず、ニュクスは自分の心の中に薄いもやがかかったような、

釈然としない何かを抱えた気がした。


自分の知らない優しさを他の大勢の人々には、大盤振る舞いしているのだろうか。

しかし、それは決して悪いことでないはずだ。

むしろ、次代の王として、臣下から愛され尊敬されることは、重要なことなのだから。


けれでも、女としての勘が、ニュクスに何かを告げている。

良い知らせでは決してないだろう、何かを。


「あの。

あなたはユピテロカ様のどの辺りがやさしいと思われる?」


訊いてはいけない気がした。

けれど逸る心にうち勝てず、その質問を口にした。


できるだけ平常心を装いながら。
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