【天の雷・地の咆哮】
それは、しとしとと霧のような雨がウェスタの街全体を覆い、
湿った風が緑の木々を揺らした深夜のことだった。
・・何かしら。
ニュクスが城にあがってすでにひとつき。
彼女は、ふと何かの物音で目を覚ました。
・・風かしら。
耳を澄ますと、梢が窓を叩くカツカツという音が聞こえる。
いったんはそれで納得して瞼を下ろしたものの、やはり、それとは違う何かの気配がしたような気がして、
ニュクスはそっと寝台から下りた。
ニュクスの部屋は、城の奥から続く渡り廊下のさらに奥の離れにある。
そこは城と違い平屋の建物で、大きな窓から美しい庭に出られるような造りになっている。
ニュクスはゆっくりと窓に近づくと、辺りを見渡した。
右側は木々が植えられており、その先がどうなっているのか見通すことはできないが、
左側に視線を移すと、ちょうどウェスタ神殿の裏側が見える。