【天の雷・地の咆哮】
ウェスタでは炎を神聖なものとして崇める風習があり、
神殿の炎は、決して絶やさない決まりになっている。
いくつもの炎が存在を主張するように、その神殿を明るく照らしていた。
・・いつ見ても、綺麗な光景ね。雨の夜だというのに、それにも負けない神々しい光だわ。
ニュクスがその炎の美しさに気を取られていると、突然目の前が黒い影で覆われた。
「きゃっ!」
驚いて声を上げたが、次の瞬間、それがだれかを察して、ニュクスはもう一度驚いた。
「ロカ!!」
大急ぎで窓を開けると、びしょぬれのロカがにやりと笑い、薄闇に白い歯が光る。
「よぉ。ニュクス。ご機嫌いかが」
「ご機嫌いかが、って。こんな夜更けに」
非常識なことは毎回だ。
もう慣れた、と思ったニュクスだったが、やはり声を上げずに入られなかった。
「どうなさったの!衣がぼろぼろだわ。
まさか、怪我をしてるの?」