とんでも腐敵☆パートナー

4-4. 私的チンピラは派手なシャツを着てる

<<<< 栗子side >>>> 
 
 高地さんが、祥子の乗ったボートを浜に引き上げ、中からぐったりとした様子の祥子を抱え上げた時、あたしは呼吸をするのも忘れる程に身を強張らせた。
 
 すぐ胸が苦しくなって、ゆっくりと息を吐き出す。
 
 それから自分に喝を入れ、背筋をしゃんと伸ばすと、高地さんが運ぶ祥子のもとへ一目散に駆けていった。
 
「祥子! 意識はあるの!?」
 
 高地さんへの問いかけのつもりで声を張り上げると、
 
「……る、よ……」
 
 祥子自身から返事が返ってきて、ほっとした。
 
「軽い熱中症だ。日陰に入れて、水分をよく補給すれば治る」
 
 朽木さんからそんな説明を聞かされ、更に安心して祥子の顔を覗きこんだ。
 
「取りあえず、日陰に行くぞ」
 
 そう言うと高地さんは、祥子を抱えたままピーチパラソルの下まで移動した。
 
 あたしと真昼は日陰の部分にシートをずらし、上にタオルを敷き詰める。そこに祥子が降ろされた。
 
 水を買ってきた拝島さんが、祥子を抱き起こしてペットボトルの口を祥子の口に当てる。
 
 あたしはタオルを水で絞り、祥子の額に当てた。その間中、朽木さんは、祥子をつぶさに観察し、脈拍を計ったり、体の状態をチェックしていた。
 
 もうできることもないので、あたしは一歩退いた場所から祥子を見つめる。横から、ひやっとした風を感じ、見ると、真昼が何処からか持って来たらしいウチワを真剣な顔で扇ぎ、祥子に風を送っていた。真昼のこんな顔、滅多に見たことない。祥子のあんな弱弱しい様子も、だけど。
 
< 113 / 285 >

この作品をシェア

pagetop