とんでも腐敵☆パートナー
「も、だい、じょうぶ……よ」
 
 ふいに、祥子が小さな声で、途切れ途切れに言った。
 
「無理に喋らないで祥子。あんたもたまには休息が必要ってこと、これで骨身に染みたでしょ」
 
 ふっと真昼の表情が和らぐ。
 
「休息、してて……こう、なったん、だけどね……」
 
 祥子の言葉は、徐々にしっかりしたものになってきた。体力が回復してきたらしい。もう、いつもの祥子に戻ってる。
 
「全てを他人の手に委ねて、ゆっくりしてろってことよ」
 
 真昼にも、いつもの柔らかい笑顔が戻った。
 
 祥子と真昼は高校時代からの友人同士だ。二人の絆は、一見したよりも強い。
 
 二人がこんな表情をするからには、もう安心だ。あたしも肩の力を抜いた。
 
「ごめんね、祥子ちゃん。俺が……ボートなんか薦めたから……」
 
 祥子の傍にずっとついていた高地さんが、苦しげな表情で言う。
 
「まさか……ボートに、乗るって、言ったのは……私よ。自業自得。……炎天下で……なんの、防備もなく、寝るなんて……すんごいバカ」
 
 祥子は言いながら目を閉じ、はぁっとため息をついた。
 
「いや、俺のせいだよ。ホントにごめん。こまめに様子を見に行けばよかった」
 
 高地さんはまだ自分を許せないようだ。
 
 祥子は薄く目を開け、高地さんを横目に睨んで言った。
 
「私が、俺が、の、取り合いで……無駄に、体力、使いたく、ないんだけど? ……私が悪いの。それで終わり」
 
 まだ完全に力は取り戻せてないけど。
 思わず口をつぐんでしまう、いつもの強さを秘めた言葉。
 
 あたしは思わず笑ってしまった。
 
 立ち上がって、浜辺に残してきたボートを取りに向かう。なんとなく、体を動かさずにはいられなかった。
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