とんでも腐敵☆パートナー
「そうですか。じゃあ一緒に尾行しますか?」
 
「うん、でもその前にそのグラサンはこっちに替えなよ」
 
 言いながら拝島さんがポケットから取り出したのは拝島さんのとお揃いの黒縁眼鏡だった。
 
「設定は俺と兄弟、かな。怪しい二人組だと目立つからさ。付け髭は取って、少年っぽく振舞ってね」
 
 てきぱきと指示をくれる。おおーなんか本格的。
 
「兄弟ですね! 了解ですアニキ!」
 
「それ、なんか違う……」
 
 がっくりと肩を落とす拝島さん。
 
「敬語もなしでいいから、『お兄ちゃん』って呼んで。普通の男の子っぽくね」
 
 お兄ちゃん……。
 
 なんかのプレイみたい。
 
 ってのは口には出さず、
 
「了解、お兄ちゃん!」
 
 ビシッと敬礼ポーズで言い直した。
 
 にっこり顔で頷く拝島さん、
 
 と、そこではた、と気付くあたし。
 
 慌てて双眼鏡を目に当て、待ち合わせ場所を見やる。
 
 既に高地さんと祥子は合流して、でへでへ顔の高地さんとは対照的にぶすっとした顔の祥子から負のオーラが漂っていた。
 
 一生懸命話しかけてる様子の高地さんだが、まったく相手にされてない。
 
 まぁなんつーか予想通り。
 
 時刻は9時15分。
 
 そろそろいいかな、とあたしは携帯を取り出し、祥子のナンバーに電話をかけた。
 
「もしもし祥子?」
 
『グリコ? アンタ何してんの! もう15分も遅刻よ!』
 
 うは。怒ってる怒ってる。
 
「ごめーん。あのね、あたし朽木さんと拝島さんと一緒に行こうとしてたんだけどね。電故でさ。駅で足止め食らってるの」
 
 ヘタな言い訳だけど、ここは駅から大分離れてるからバレることはないだろう。後日バレて大目玉食らうだろうけど。
 
 その時のことを考えると今からブルっちゃうけど怒られるほどのことをしてるわけだし素直に怒られましょう。
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